発達障害と脳のメモリ容量

発達障害の人は、脳のメモリ(仕事で言うところの机の広さ)や容量が少ないと言われていますが、私もまさにそれを実感しています。

日常生活の中で、すぐにメモリがいっぱいになる感覚があり、それを超えると脳が固まってしまいます。思考が止まり、先に進めなくなり、時には動くことすらできなくなるのです。

この特性とうまく付き合いながら生活するために、私は日頃から脳に入ってくる情報量を減らす工夫をしています。

情報の整理とは?

ここでいう“情報”とは、知識や教養のことではなく、視覚や聴覚を通じて脳に送られる情報のことを指します。

たとえば、視覚的な情報なら、

  • 部屋のインテリア
  • 着ている洋服の柄

こういったものをシンプルに統一することで、脳の処理負担を減らしています。色数を少なくしたり、柄物を避けたりするだけでも、驚くほど思考の余裕が生まれ、物事に集中しやすくなります。

また、デスクの上が散らかっていると、それだけで無意識に処理すべき情報が増えるので、作業効率が数%は確実に落ちます。なるべく物を減らし、スッキリとした環境を整えるようにしています。具体的に言えば、私の机の上にはパソコンとマグカップ以外、何も置いてありません。

パソコンの動作に例えると…

これは、パソコンで複数のソフトを同時に開いて作業すると動作が遅くなり、しまいにはフリーズしてしまう現象に似ています。

  • 目に何かが映り込んでいるとき
  • 耳から何かが入りこんでいるとき

脳は無意識にそれらの情報を処理しようとしてメモリを消費してしまうのです。

パソコンのタスクマネージャーを開くと、知らないバックグラウンドプロセスが動いていて動作を重くしていることがありますよね。脳も同じで、気づかないうちに処理が走り続け、気力や集中力が削がれてしまうのです。

人との会話もメモリを消費する

人と会うのも、ものすごくメモリを消費します。

特に、私のような自閉スペクトラム症の人間の場合、人と会うときは無意識に「対人用のコミュ力高い系の人格」に擬態するので、そのために多くのメモリを使います。要するに人とのコミュニケーションを感情で自然に行うことが出来ない私の場合は、ほとんどの会話パターンをマニュアル化した形で記憶しており、人と会ってるときは次のような処理が脳内で行われています。

  • 「このパターンで話しかけられたときの対応法は?」
  • 「この表情の裏にある相手の本当の感情は?」
  • 「この語句のあとに続く最も可能性の高い語句と話を広げるための最適な方向性は?」

こうした処理が脳内で次々と行われ、そのあと人と別れて一人になったときにどっと疲れが出るのです。

引きこもりのメリット

そんな脳の特徴を持つ発達障害の人間にとって、一番安らげる環境が「ひきこもり」の状態だと私は思っています。

これは単なる怠けではなく、脳に負担をかけずに生活するための合理的な選択肢なのです。たとえば無職のひきこもり生活にとどまらず、フリーランスで自宅で仕事をしているクリエイター生活なども当てはまります。誰とも接触せずに毎日を規則正しく自分なりのルーティンで誰にも邪魔されずに淡々と繰り返す生活、そこに精神的な落ち着き、穏やかさ、しあわせを見出すことが出来るのです。

逆に、会社員として毎日出社し、人と会話し、新しい体験をし続ける生活は、膨大な情報処理を求められ、気づかないうちに脳が疲れ果ててしまいます。

写真と動画の違いくらいの情報量

この「ひきこもりタイプの生活」と「会社員スタイルの生活」の情報処理量の違いを、パソコンやスマホで例えるなら、

写真ファイルと動画ファイルの違いくらい大きいのではないかと思います。

昔は写真だけを撮っていたのが、今ではスマホで簡単に動画も撮れるようになり、保存するデータの容量が爆発的に増えました。それと同じように、人との交流や外出が増えれば増えるほど、脳のメモリ消費も加速度的に増えていくのです。

スマホなら大容量の機種に買い替えれば済みますが、人間の脳はメモリを増設できないのが悩ましいところですね。

発達障害と私